高松市で助成金申請を検討する企業のための基礎知識

──社労士が解説する「助成金との上手な付き合い方」──

助成金制度は、中小企業にとって“使わないと損をする”と言われるほど重要な経営リソースです。しかし、その一方で「制度が複雑でよくわからない」「うちの会社は対象になるのか判断できない」と戸惑う事業主の方も多く、高松市内の企業からも同様の相談を受けることが少なくありません。

本記事では、社労士としての専門知識をベースに、助成金の基礎構造・活用ポイント・よくある誤解・最新の傾向を、初めての方でも理解できるように体系的に解説していきます。

高松市で助成金申請を検討している事業者の方が、制度をより正確に理解し、自社に最適な活用方法を見つけられるよう、できるかぎり網羅的にまとめました。


1.助成金とは何か?補助金とは何が違う?

まず押さえておきたいのは、「助成金」と「補助金」は似ているようで実際にはまったく異なる制度だという点です。この違いが曖昧なまま申請を進めると、「思っていた支援と違った」「要件を満たさず不支給になった」といったトラブルに発展します。

■ 助成金の特徴

  • 厚生労働省が主に実施
  • 労働環境の改善や雇用創出が目的
  • 社会保険の適用・労務管理が要件に深く関わる
  • 審査は形式審査(基準を満たすか)が中心
  • 予算枠は比較的安定(補助金ほどの競争はない)
  • 支給率・金額は制度ごとに明確に設定されている

■ 補助金との違い

  • 補助金は経済産業省系が中心で、事業の成長や投資を目的とする
  • 審査は「採択型」で、事業計画の優劣によって合否が決まる
  • 採択率は年度により大きくブレる
  • 書類のクオリティが結果に直結する

助成金は「要件を満たせば比較的受給しやすい制度」である一方、労務管理の整備が必須です。
つまり、経営の土台となる“雇用のルール”に向き合うことが受給の第一歩になります。

2.助成金が企業にもたらす3つのメリット

助成金というと「お金がもらえる制度」というイメージが先行しがちですが、実際は“会社づくり”そのものに良い影響をもたらします。

① 労務トラブルを未然に防げる
助成金の要件は、

  • 就業規則
  • 労働条件通知書
  • 社会保険加入
  • 労働時間管理

など、いわば「最低限守るべき労務管理」を前提に設定されており、助成金申請のプロセスでこれらが整うことで、結果として労働基準監督署の指摘リスクや退職トラブルが大幅に減少します。

② 社員の定着と育成につながる
最近の助成金は「キャリア形成」「働き方改革」「職場環境改善」がキーワードになっており、例えば教育助成金で研修を行えば、従業員の能力が育ち、結果として定着率も自然に向上していきます。

③ 財務的な余力を確保できる
助成金は返済不要で、使い道は基本的に自由です。
人材育成・設備投資・福利厚生など、これまで後回しにしてきた分野に予算を回せるようになり、高松市内の中小企業でもキャッシュフロー改善に役立てているケースは多くあります。


3.高松市の企業が特に活用している主要助成金一覧

本記事では特定の助成金に偏らないよう、全体像を俯瞰する形で紹介したいと思います。

雇用関係助成金(厚生労働省)

厚生労働省が実施する助成金の中心で、企業規模にかかわらず申請するケースが最も多い分野です。

1)キャリアアップ助成金

非正規社員の待遇改善を目的とした制度で、企業からの相談が特に多い助成金です。
主なコースは以下の通りです。

1つでも欠けていると“不支給”になるケースもあり、専門的な確認が欠かせません。

  • 正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金引上げ等支援コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース

キャリアアップ助成金は要件が多く、事前計画書の提出や就業規則の整備が不可欠ですが支給額が大きいため“経営効果が見えやすい”点が特徴です。

2)人材開発支援助成金

従業員の教育・訓練に活用できる万能型の助成金で、研修費用や賃金助成が支給対象となり、以下のようなケースに向いています。

  • 新入社員の基礎研修
  • 管理職研修
  • 社内教育体系の整備
  • 外部講座受講(専門学校・eラーニングなど)

「教育に投資したいが予算がない」という企業にとって、有力な選択肢になります。

3)両立支援等助成金

育児・介護・治療との両立を支援する企業を対象とする助成金です。

  • 育児休業取得支援コース
  • 職場復帰支援コース
  • 介護離職防止支援コース
  • 不妊治療両立支援コース

人手不足が続く高松市でもニーズが高く、特に“育休復帰支援”に注目が集まっています。

4)働き方改革推進支援助成金(設備投資型)

労働時間の削減や生産性向上のために設備投資した企業を対象とする助成金で、近年大きく注目されています。

  • 勤怠システム導入
  • 業務効率化ソフト
  • 自動化機械
  • ペーパーレス化設備

IT化を進めたい企業にとって使いやすい助成金です。


香川県・高松市の施策と組み合わせる方法

助成金は国の制度だけではなく、自治体の支援策と併用することで“相乗効果”が出るケースがあります。
高松市や香川県では、

  • 働き方改革の推進
  • 新規雇用支援
  • 県内就職若者の定着
  • DX導入補助

など多様な支援が整備されています。
これらは年度ごとに内容が変わるため、最新情報の確認が必須です。


4.助成金の申請でよくある誤解と落とし穴

助成金は「要件を満たせば比較的受給しやすい制度」ですが、その一方で不支給となるケースが毎年一定数存在します。よくある誤解を整理しておきましょう。

誤解①:助成金は後から申請しても大丈夫
助成金の多くは、
“事前の計画届や申請手続きがないと対象外になる”
という仕組みです。

例:キャリアアップ助成金の正社員化コース
→ 転換前に計画書が提出されていないと、どれほど条件を満たしていても申請できません。

誤解②:社会保険未加入でも申請できる
助成金は「適切な労務管理」を前提にしています。
社会保険の加入漏れがある企業は、原則として助成金の対象外になります。

誤解③:就業規則が古くても問題ない
就業規則は法改正の影響を強く受けるため、3年・5年放置している企業では要件を満たせないケースがほとんどです。
助成金申請を機に“現実に合った就業規則”へ整備することで、会社全体の運用も改善されていきます。

誤解④:一度助成金を受給したから今回も通るはず
助成金は毎年改正されるため、昨年OKだった要件が今年はNGというケースも十分ありえます。
特にキャリアアップ助成金は改定が頻繁で、年度ごとに適切な要件確認が必須です。


5.助成金を上手に活用する企業が実践している4つの視点

助成金を“申請するだけ”ではなく“経営に活かす”ためには、企業側にも一定の視点が求められます。

視点①.労務管理を「整える」ことを優先する

助成金の前提は、

  • 労働時間
  • 雇用契約
  • 社会保険
  • 就業規則

などが適正であることです。
制度の活用を通じて、まずは労務の土台を整えることが長期的なメリットにつながります。

視点②.中長期の人材戦略と結び付ける

「とりあえず使える助成金を探す」のではなく、

  • 正社員比率の見直し
  • 若手人材の育成
  • 管理職の強化
  • 生産性向上の基盤づくり

など自社の戦略に沿って助成金を位置づけることが重要です。

視点③.複数の助成金を組み合わせる

たとえば、

  • 教育 → 人材開発支援助成金
  • 処遇改善 → キャリアアップ助成金
  • 働き方改革 → 働き方改革推進支援助成金

など複数の助成金を「同時期に併用」する企業も増えています。

視点④.専門家(社労士)を活用してリスクを軽減する

助成金は書類のボリュームが多く、

  • 事前計画
  • 就業規則改定
  • 労働条件の確認
  • 申請書類の整備

など専門的な作業が欠かせません。

専門家に相談することで、
「申請したのに不支給」
「手続きの漏れ」
「年度の改定に対応できない」
といったリスクを大きく減らせます。

6.よくある質問(Q&A)

高松市内の企業から多く寄せられる質問を、社労士の立場で整理して回答します。

Q1.うちの会社が申請できる助成金はどう調べれば良い?
A. 年度や企業規模、雇用形態により大きく変わるため、まずは“現在の労務状況”を整理することをおすすめします。

Q2.助成金は返済しなくても本当に大丈夫?
A. 助成金は返済不要です。ただし、不正受給があった場合は返還だけでなく企業名公表の可能性があります。

Q3.赤字の企業でも申請できますか?
A. はい。助成金は雇用維持や職場環境改善が目的であり、利益の大小は原則関係ありません。

Q4.1人だけ雇っている小規模事業でも対象になりますか?
A. 助成金の種類によりますが、1人事業でも対象となる制度は存在します。

7.まとめ:高松市で助成金を活用する企業が増えている理由

高松市内では、

  • 働き方改革
  • 人材不足
  • 若手人材の確保
  • DX推進

などの背景から、助成金を“経営の選択肢の一つ”として活用する企業が増えています。

助成金は単なる「資金補填」ではなく、
会社の体制を整え、従業員の働きやすさを高め、長く続く企業へと成長するためのきっかけとなります。

そして、助成金は毎年内容が改定されるため、
「最新の制度を理解し、自社に適した活用方法を見極めること」
が最も重要です。

最後に

高松市で助成金を活用し、労務管理の整備と職場環境の改善を進めたい企業の方にとって、社労士は最も身近な専門家です。高島社労士事務所では、制度解説・労務診断・申請支援・就業規則の見直しなど、企業の状況に合わせたサポートを行っています。助成金を「企業の未来につながる投資」として活用したい方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。


高島社会保険労務士事務所
香川県(高松市・丸亀市)の給与計算・助成金申請専門の社労士